世にも奇妙な小話【天国の妻へ】

世にも奇妙な小話
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marchosiasさんからの投稿

私と家内はネットで知り合いました。



当時、元カノが婚約寸前までいきながら、新しい男を作ってしまい別れたこともあり、出会いを求めてました。



もちろん出会った当初は顔も声もわからず、彼女は携帯すら持っておらず、ネカフェからのメールだけのやり取り。



でもそのうち電話で話すようになり、直ぐにお互いに会いたい!と言い始めて、1番地理的にわかる県庁所在地の駅で待ち合わせすることに。



そこに現れたのは・・・









太った大きな家内の姿。



でも不思議と可愛らしさしかなく一目惚れ。



挨拶もしないで、会ってからの第一声は







「結婚してください!」でした。



もちろん妻はキョトンとした顔で「バカなの?」と返事してました。








それから交際をしていくうちに、少しずつ彼女のことがわかってきました。



精神的な病があること、離婚歴があること、その他に体が弱く通院していること。



それでももちろん彼女を嫌いになるなんて事はなく、私たちは結婚しました。



幸せな結婚生活でした。



毎日毎日笑って、体の弱い彼女を車椅子にのせて、どこへでも行きました。



お金はなかったけど、毎日が楽しかった。



結婚生活の半分以上が病院での入院生活でしたけど、それでも私は幸せでした。



しかし









それは突然終わりを迎えました。






その日、疲れていた私は妻に



「先に横になるよ」



そう言って寝室に。



彼女はもう少しテレビを見たいと居間に残りました。



その後、いつまで経っても寝室に来ないので心配になって迎えに行くと










彼女は居間で倒れて冷たくなっていました。



私は心肺蘇生法を試みましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。

急性心不全で、血管も心臓もボロボロだったようです。






私は茫然自失。


そのせいで、その後の彼女の葬儀や、そこからしばらくの間の記憶がないんです。



ただ、四十九日に彼女が夢枕に立った出来事だけははっきりと覚えています。






彼女と私は駅のホームのベンチに座ってました。



彼女を連れて帰ろうとすると、彼女は私に厚い本のようなものを私に手渡したんです。



それは彼女の心の叫びが綴られてました。






「〇月〇日 また入院が決まった。家にいたい。ずっと一緒にいたいのにできない。それどころかまた迷惑をかけてしまう。」



そんな事が書き綴ってありました。私は思わず




「迷惑なんてあるもんか!

お前の事を愛してるから、1度だって辛いなんて思ったことはない。

だから俺と一緒に帰ろう。

また一緒に暮らそう」




と彼女に言いました。



すると彼女は私に笑いかけます。



でもその笑顔はとても悲しそうでした。






いつの間にかホームには電車が来ていて、彼女は大事そうにその本を抱え、無言のまま電車に乗り込んだんです。



私は必死に止めようとしたんですが、金縛りにあったように体が動きません。



目の前でドアが閉まり、ドア越しに彼女が何かを言っています。











「バイバイ」










口元は、確かにそう動きました。



ゆっくり電車が動き出して、いつまでも彼女はドアの向こうでヒラヒラと手を振って、悲しい笑顔で私を見ながら電車と共に去っていきました。








その夢を見て、私には彼女がもういないんだという現実がようやく理解できました。



それからの1年は地獄のような日々でした。



私は毎日毎日自分を責め続けました。



助けてあげられなかった。



守ると約束したのに、約束を果たせなかった。



自分の無力さを呪いました。






そして私は、いつしか死ぬことばかり考えるようになりました。






真っ暗な部屋の中殆どどこにも出かけることも無く、寝るか、ボーッして過ごす日々。



私は体も心もボロボロになりながら、それでも彼女の影を追いかけ続け、自分を呪い続けました。



そして迎えた2年目のお盆。



送り火を焚きながらボーッと火を見つめて座り込んでました。



すると











視界の端に彼女の着ていた愛用のパーカーの裾が見えたんです。



もちろん家には私以外誰もいません。



私は確認するでもなく、自然と彼女に話しかけるようにこう呟きました。









「お前を助けられなかった事を許してくれ。

それどころか、まだお前のところに逝ってやることもできない根性無しのオレは、本当にダメな男だね……。

もういっそ、お前のところに一緒に連れていってくれ……頼むよ……。」








私の言葉は虚しく宙を舞いました。


しかし









次の瞬間、彼女の声が私の耳元で聞こえました。











「……もういいんだよ……」








それは、私が一番聞きたかった言葉でした。



毎日自分を責め続け、己の無力さを呪い、しかしどんなに許しを乞うても許してくれる相手はもういない。



考えることは“死”についてばかり。



そんな絶望の淵にいた私を、彼女はきっと見かねたのでしょう。



姿こそはっきりとは見えませんでしたが、彼女は天国から一時だけ私の元にやってきてくれたのです。




私は彼女に逢えた事が嬉しくて、そしてようやく自分が許された気がして、ただただ泣き続けました。



もう一度辺りを見渡しましたが、やはりそこに彼女の姿はありませんでした。










彼女が亡くなって今年で7年。




私は今も元気に過ごしてます。



実は震災直後に難病におかされ、少しずつ体の調子が悪くはなってますが、それでも手作業をしたり、イベントに参加したりと忙しく過ごしてます。



彼女との楽しかった日々を思い出す事がとても辛く、いっそ忘れてしまいたくなることもありましたが、今では彼女と過ごした日々を誇りに思っていることを、天国にいる彼女に伝えたいです。



私は40年の彼女の人生のうち、4分の1を支え、愛し続けたんですから。



何より、彼女は今でも私の大切な記憶で、私の愛する人ですから。




※marchosiasさんは以前にも漫画の方でお話を採用させていただきました。
気になる方はこちらからご覧ください。

コメント

  1. 匿名 より:

    大切な人を失う悲しみを考えただけで辛い…
    なのでmarchosiasさんもとても辛かったと思います。奥さんもきっと。もっと一緒に居たかったでしょう。
    別れは辛いけど、素敵な人と巡り合えてよかったですね。

    夫婦愛にほっこりもしました。
    ありがとうございます。

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